2026 iTOPシンポジウム ジャパン 臨床活用セミナー取材レポート
患者自身が主治医となる『近未来の予防歯科』と
臨床現場を劇的に変えるセルフケア指導の最前線に迫る!
歯科医療のあり方を変える「iTOP」の挑戦
スイス発の口腔予防プログラム「iTOP(Individually Trained Oral Prophylaxis)」は、科学的根拠に基づき、患者一人ひとりを自らの健康を守る「主治医」へと自律させる、歯科医療のあり方を根底から変える挑戦をしています。その中で、iTOPが日々向き合っているのは、単なる口腔内の「汚れ」の除去ではありません。その先にあるのは、患者さんの「全身の健康」と、日々の「幸福(Happiness)」そのものです。
2026年3月20日、東京・秋葉原で開催された「2026 iTOPシンポジウム ジャパン 臨床活用セミナー」には、この哲学を臨床の核とする多くの歯科医療従事者が集まりました。
当日は、なんと定員200名の席が満席となり、後方では追加席にて聴講されているお姿も。歯科衛生士の方々をはじめ、多くの歯科医療従事者の皆様が集まる大盛況なセミナーとなりました。

当日の会場の様子
基調講演:天野 敦雄 教授 —— The Gentle Guideが指し示す 近未来の予防歯科
シンポジウムの幕開けを飾ったのは、大阪大学大学院歯学研究科の天野教授による基調講演です。「未来は予防(THE FUTURE IS PREVENTION)」という力強いメッセージとともに、これからの歯科医療が目指すべき姿が提示されました。

講演を行う天野教授
天野教授は、従来の「指示(ティーチング)」から、患者の価値観を尊重し共に歩む「並走(コーチング)」へのシフトを説きます。その科学的根拠として強調されたのが、バイオフィルムの「質」へのアプローチです。「プラークコントロールの本質は、量の除去ではなく『病原性を下げる質』の勝負です」と教授は指摘します。特に歯周病を悪化させる悪玉菌(レッドコンプレックス)は、血液中のタンパク質や鉄分を栄養源にするため、「磨いても血が出ない状態」を維持できれば、悪玉菌は自然と弱体化していくと説明されています。
iTOPが提唱する「Touch to Teach(触れて教える)」を通じて、患者自身が自分の口の「主治医」として自律すること。これこそが、最先端のバイオロジーに基づいた唯一の正解であることを再確認させてくれる講演となりました。

iTOP提唱の「Touch to Teach」を解説する天野教授
なお、天野教授より日本語訳をいただいた「THE GENTLE GUIDE」については、下記のPDFダウンロードリンクより内容を閲覧いただけます。ぜひご覧ください。
・PDFダウンロードリンク:https://curaproxpro.jp/document/#sec_gentle-guide
特別講演:槻木 恵一 教授 —— 唾液ケアのすすめとクラプロックスの効果
神奈川歯科大学副学長の槻木教授は、口腔ケアを「全身の健康を守る免疫戦略」として捉える視点を提示しました。唾液は単なる水分ではなく、全身の代謝や免疫に関わる重要な役割を担う「驚異の液体」であると説明されています。
咀嚼によって唾液と食物を十分に混和することで、発がん性物質を解毒する「ペルオキシダーゼ」の活性化や、血糖値上昇を抑制する「セファリック・インスリン・リリース」が誘発されるといいます。中でも、感染防御に関わる粘膜免疫の中心的存在である「IgA(免疫グロブリンA)」の重要性が強調されました。

講演を行う槻木教授
さらに、最新の臨床データにより、クラプロックスの音波式電動歯ブラシ「ハイドロソニック イージー」の使用が、唾液中のIgA分泌を高める可能性が示されました。適切な物理刺激によって口腔内の免疫力を引き出すことは、う蝕や歯周病のみならず、ウイルス感染症を未然に防ぐ最強のバリアとなります。この知見は、クラプロックスを単なる清掃道具から「全身の健康寿命を守る免疫デバイス」へと昇華させ、参加者が抱く製品への確信をさらに深めるものとなりました。

電動歯ブラシにおける唾液分泌効果について説明する槻木教授
臨床講演:前田 梨乃 歯科衛生士 —— インプラントと審美治療の成功を支える臨床セルフケア
午後のセッションでは、代官山WADA歯科・矯正歯科勤務の前田歯科衛生士が、インプラントや審美治療の長期予後を支える「個別化されたセルフケア」の実践例を紹介しました。
前田歯科衛生士の手法で特筆すべきは、HbA1c(安全基準6.9未満)やCRP、アルブミンといった血液データを活用したリスク評価です。全身状態から歯周組織の脆弱性や炎症リスクを客観的に読み解き、それに基づいてリコール間隔や清掃ツールを厳選するアプローチは、歯科衛生士の専門性を一段引き上げるものでした。

講演を行う前田歯科衛生士
前田歯科衛生士は、全オペ患者にクラプロックスの「インプラントキットⅡ」を処方し、IAプローブを用いた客観的なサイズ選定を徹底しています。インプラント周囲のデリケートな粘膜を傷つけない「パラソル効果」への信頼に加え、「道具を好きになってもらうことが、患者さんの自立を加速させる」という情熱的なメッセージは、iTOPの理念が単なる技術ではなく、患者さんの人生の幸福のための哲学であることを印象づけました。

クラプロックスのシングルブラシについて説明する前田歯科衛生士
臨床講演:内藤 和美 歯科衛生士 —— 歯周治療を成功に導くためにiTOPができること
内藤歯科衛生士は、重度歯周炎の難症例をいかに外科処置、そしてその後の長期安定へと導くかについて、臨床的な視点から熱く語りました。
歯周治療における最大の壁は、術者がどれほど高度なSRPを行っても、患者自身のプラークコントロールが改善しなければ病状の進行を止められないという点にあります。内藤歯科衛生士は、iTOPの「Touch to Teach」を通じて、患者が「自分の手で治している」という実感を育むことを重視しています。

講演を行う内藤歯科衛生士
特に外科処置後のデリケートな管理において、超極細毛ブラシ「CSサージカル」は不可欠なツールとなります。毛の密度が高く、縫合糸にも引っかかりにくいため、術後早期から痛みを抑えつつ清潔な治癒環境を維持できることが、予後の安定に直結します。また、初診時の重度な炎症状態の写真を定期的に見せ、「二度とあの状態に戻りたくない」というモチベーションを維持させる工夫も紹介されました。治った後の「気持ちよさ」を共有し、共に守り続ける姿勢は、医療者と患者の強い信頼関係を構築する鍵となります。

外科処置後のクラプロックスの位置づけについて説明する内藤歯科衛生士
【現場の熱気】展示ブースとポスターセッション、参加者のリアルな声
講演の合間、ホワイエは熱心な議論と交流の場となりました。iTOPインストラクターによるポスターセッションには人だかりができ、臨床での具体的な実践例に多くの参加者が視線を注いでいました。展示ブースには数多くのクラプロックス製品が展示され、和やかな雰囲気の中でプロフェッショナル同士の絆が深められました。

賑わう展示ブースの様子
展示ブースで伺った参加者の皆様の声には、iTOPとクラプロックスへの深い信頼が溢れていました。
- 「一般的な製品はコストや人気を優先するが、クラプロックスは医療専門家が解剖学的形態や習慣化を考え抜き、理想を追求して作られている。その根本的な考え方の違いにしびれる」
- 「ポップなデザインは患者さんの興味を引き、実際に使うとその心地よさで 100%納得してもらえる。1,000 円以上の価値を伝える自信につながっている」
- 「従来の 1 ヶ月交換ではなく『3 ヶ月交換』という新しいサイクルは患者さんにとってメリットになるので、使ってみたい」
これらの声は、質の高い道具とプロのコーチングを組み合わせることこそが、理想の歯科医療であるという確信を象徴していました。

参加者へのインタビューの様子
臨床講演:川島 侑里 先生 —— セルフケアの質が変わる! クラプロックス臨床活用におけるケースプレゼンテーション
宮崎台まごころ川島歯科医院院長の川島先生は、「OHIを成功させるために見るべきは、テクニック以前に『ブラシ圧』と『口腔周囲筋』である」という極めて鋭い視点を提示されました。
川島先生は、歯肉に現れるサインを「即時性外傷」「反応性炎症」「慢性形態変化」「低効率清掃」の4つのタイプに分類し、不適切な圧やストロークが組織に与える影響を読み解く重要性を説きました。圧をコントロールするための極意として紹介されたのが、手・手首・肘の「3つのパワーポイント」の緊張を解く、「ダーツの投げ方」を応用した指導法です。

講演を行う川島先生
道具の活用においても、CS5460のような大きなヘッドサイズは奥まで届かないという固定観念を覆し、口腔周囲筋に配慮して「入れ方」や「角度」を整えれば、臼歯部まで確実に届き、その毛の長さと密度の高さが優れたフィット感を生むことを実証されました。さらに、手磨きでの圧コントロールや改善が難しいケースに対しては、音波式電動歯ブラシ「ハイドロソニック」を柔軟な選択肢として提案する重要性にも触れられています。
実際に患者さんの肘や肩に触れ、リラックスした状態を体感させるプロセスは、まさにiTOPの本質を具現化するものでした。

歯ブラシの正しい持ち方、持つ位置について講演する川島先生
臨床講演:柿本 薫 歯科衛生士 —— 歯科衛生士がつなぐ、歯科と医科
麻生歯科クリニック勤務の柿本歯科衛生士は、糖尿病療養指導士としての知見を活かし、「口腔を身体の一部と捉え、歯科から全身の健康を守る」という、歯科衛生士の新たな使命を提言しました。
糖尿病と歯周病の密接な相関関係を示すデータとして、自院の糖尿病患者のBOPが100%であったという衝撃的な数値を提示し、歯科衛生士による早期介入の重要性を強調しました。柿本歯科衛生士が推進するのは、「糖尿病連携手帳」を活用した医科との積極的な情報共有です。

講演を行う柿本歯科衛生士
脳出血を経験した患者の症例では、生活習慣の乱れが連鎖する「メタボリックドミノ」の視点から、患者の背景にある苦悩や「多汗」といったサインを読み解き、心に寄り添うことで大きな行動変容を導き出しました。炎症が強く繊細な歯肉でも、痛みなく磨けるクラプロックスの「CS5460」が、患者さんのセルフケアへの第一歩を支える救世主となります。医科との架け橋となり患者の人生を守るその姿は、iTOPの理念を社会実装していくまさに今の時代を駆け抜ける歯科衛生士像そのものでした。

糖尿病について説明する柿本歯科衛生士
Q&Aセッション:臨床の困難に立ち向かう「個別化」の知恵
セッションの最後には、参加者から「脳梗塞の後遺症などで手が不自由な患者さんへの対応」という、切実な質問が投げかけられました。これに対し、内藤歯科衛生士と柿本歯科衛生士から、iTOPの「個別化」の精神を体現する具体的な解決策が示されました。
内藤歯科衛生士は、レジンやパテを用いて、患者さんが最も握りやすい形に歯ブラシのグリップを「パーソナライズ」する手法を提案。これにより、わし掴み(パームグリップ)しかできない方でも、自らの手で磨く喜びを維持できます。また、柿本歯科衛生士は、身体的なハンディキャップを補完する手段として音波式電動歯ブラシ「ハイドロソニック イージー」の活用を挙げ、3段階のモード切り替えや安定感のあるブラシヘッドが大きなものを選択することで、より簡便で効果的なケアが可能になると助言しました。
これらの回答は、患者一人ひとりの身体状況に寄り添い、プロの視点で共に解決策を探るiTOPの哲学を象徴する内容となりました。

Q&Aセッションの様子
総括:iTOPが変える歯科医療の未来と、私たちが守る「Happiness」
本シンポジウムを通じて示されたのは、歯科医療の価値を「病気を治す(キュア)」から「一生涯の健康を守り続ける(ケア)」へと劇的に転換させるiTOPの圧倒的な力です。科学的根拠に裏打ちされた唾液学やバイオフィルム制御の知見、そして臨床現場での個別化されたコーチングの重要性が、各分野のエキスパートたちによって多角的に実証されました。
iTOPの真髄は、プロフェッショナルが一方的に教えるのではなく、患者と共に歩み、患者自身を「自らの健康を守る主治医」へと育て上げるプロセスにあります。質の高い道具を、確かな技術と情熱を持って「個別化」して届けること。その積み重ねこそが、単なる清掃を超えた「自律した予防」を可能にします。
「OHIは、患者さんの人生の幸せ(Happiness)を守る仕事である」。この共通の誇りと熱気は、参加したすべての歯科医療従事者の心に深く刻まれました。本シンポジウムで共有された哲学と技術は、明日からの臨床において、患者さんの笑顔と健康寿命を支える確実な道標となるはずです。

iTOPインストラクターおよび関係者様の集合写真



















