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注目の実習・体験型セミナー 予防歯科医院が進めるTBI iTOPアドバンスコース

注目の実習・体験型セミナー 予防歯科医院が進めるTBI iTOPアドバンスコース

グローバル講師に直接学ぶ2日間!「iTOPアドバンスセミナー」で学ぶ、患者指導における「コーチングの極意」とは?

グローバル講師に直接学ぶ2日間!「iTOPアドバンスセミナー」で学ぶ、患者指導における「コーチングの極意」とは?

 

はじめに

株式会社クラデンジャパンが2日間にわたり開催した「iTOPアドバンスセミナー」を体験レポートする。

 

iTOPとは、「individually Trained Oral Prophylaxis」の略称であり、世界各国で実施されているTBIの実習を含む講習会。講師を務めるのは、予防歯科の課題と可能性を網羅し、十分な訓練を受けた高いレベルの知識と技術をもつ「インストラクター」とよばれる歯科医師や歯科衛生士である。

 

今回受講したアドバンスセミナーは、イントロダクトリーセミナーの次のステップとして設けられた、中級者向けのコースで、iTOPグローバル講師のAndrew Terry先生(以下、Andrew先生)から症例別のツール使用方法やテクニックを実習形式で直接学べる2日間の集中コースである。

 

iTOPセミナープログラム

 

個別化されたTBIの国際教育プログラム

Andrew先生は、オーストラリアの「歯科衛生士」と「デンタルセラピスト」という2つの専門資格をもつ。ロンドンやスイスでの長年の臨床経験、そして教育学の修士号・博士号を取得し、現在はシドニー大学で歯科医師と歯科衛生士の両方に指導を行う上級講師である。

 

iTOPの考え方やクラプロックスの製品は、シドニー大学をはじめ世界約55の大学のカリキュラムに導入されており、これは、iTOPが単なる一企業の哲学ではなく、学術的な裏付けをもつ教育プログラムであることを示している。

 

まずはじめに、iTOPの考え方として、良い道具の概念「3つの柱」について解説がなされた。

 

クラプロックス製品は、この3つの柱をすべて満たした上で、適切で確実な機械的プラークコントロールを成功させるための要件が揃っているのだ。

 

iTOPの理念(3つの柱)

 

バイオフィルムの科学を軸にした予防の本質

講義の核心は、バイオフィルムの科学的理解にあった。バイオフィルムは約32億年前に地球上に誕生し、現代人もその原始的な存在と向き合っているという壮大な視点から解説がなされた。

バイオフィルムが5つの段階を経て成熟していく過程が示され、「私たちの仕事は、病原性を発揮する前の第2、3段階でその成熟を阻止することにある」という明確な目標が共有された。

さらに、口腔内細菌が全身疾患に及ぼす影響について、数多くの研究論文をもとにした解説が行われた。

特に印象的だったのは、歯周病患者さんの口腔内に存在する炎症の総面積を、手の平の大きさに例えた説明であった。「もしこれと同じ大きさの傷が首の頸動脈の隣にあったら放置しますか?口腔内の細菌が毎日そこから脳へ向かっているとしたら?」という問いかけは、患者さんへの説明責任の重さを痛感させるものであり、情報を正しく伝え、患者さんのモチベーションを喚起することの重要性を学ぶことができた。

 

講義を行うAndrew先生

「Touch to Teach」で伝わる指導へ

Andrew先生が繰り返し強調していたのは、患者さんとの対話の重要性、すなわちコーチングの視点であった。「一つの入れ歯が万人に合わないのと同じで、すべての人に同じ指導を推奨することはできない」と述べ、一人ひとりのニーズや生活背景に合わせた個別のアプローチが不可欠であるとの解説がなされた。

そのための具体的な手法として、「Touch to Teach(教えるために触る)」が紹介された。

 

iTOPの理念としてAndrew先生が紹介したTouch to Teach

 

Andrew先生が実践している「Touch to Teach」の方法として紹介された、「まず患者さん自身に普段の磨き方を実践してもらい、次に術者が正しい方法をデモンストレーションする。その際、患者さん本人のスマートフォンでその様子を録画し、自宅で復習できるようにする」というアイデアは非常に実践的であった。

さらに、患者さんが自身で実践する際には、術者がそっと手に触れて動きをガイドし、「感覚として覚えてもらう」ことの重要性も説かれた。これは単なる技術指導ではなく、患者さんに寄り添い、成功体験を共に創り上げていくという、まさにコーチングの極意ともいえる講義であった。

 

患者指導における「コーチングの極意」

実習セッションでは、イントロダクトリーコースで学んだ手用歯ブラシやシングルブラシ、音波式電動ブラシでのブラッシング方法、デンタルフロスの使用方法の復習から始まった。
Andrew先生やインストラクターが個別に回り、一人ひとりの技術を丁寧に確認・指導してくれるため、自分の癖や改善点を客観的に把握することができるのが、体験型セミナーの醍醐味でもある。

 

受講者のブラッシング技術を丁寧に確認・指導するAndrew先生

 

歯間ブラシの実習では、まず自身の口腔内をプローブで計測してチャートを作成し、隣の受講者に記録してもらう。次に、そのチャートに基づき実際に歯間ブラシを挿入し、適合性を確認する。もしサイズが合わなければ、その場でチャートを修正するというプロセスを繰り返す。

 

歯間ブラシ実習の口腔内チャート

 

最終的には、X字に挿入する「Xテクニック」などを用いて、患者さんが管理しやすいよう使用する歯間ブラシを3種類以下に減らす、というゴールが設定されていた。この「自己計測→実践→修正」というプロセスを通じて、自分の口腔内を深く理解することができた。

 

Xテクニックの図(講義資料を参考に作成)

 

2日目の午後には、パートナーの口腔内を計測してチャートを作成し、昨日自分で行った結果と比較するというセッションも組まれており、術者による差異を考察する機会も設けられた。

 

受講者同士で行う歯間ブラシ実習の様子

 

***

 

iTOPアドバンスセミナーは、歯科衛生士が自信を持って患者指導にあたるための、「感覚」を与えてくれるものであった。

それは、これまで知識として知っていたことに加え、自分の身体で「体感する」ことの間に横たわる、大きな隔たりを埋めてくれる貴重な経験であった。

患者指導を行う前に、まず指導者自身が深く体験し、その「感覚」を習得する。そして、その感覚を患者さんと共有しながら、一人ひとりに最適な方法を共に見つけていく。このセミナーで得たものは、単なる技術ではなく、患者さんに寄り添い、真のオーラルヘルスへと導くための「哲学」そのものであった。

 

年間を通してiTOPセミナー申込受付中!

本セミナーは、世界各国で実施されているTBIの実習を含む講習会として、1日で予防歯科に必要な知識を習得し、患者さんのモチベーションに焦点を当て、プラーク関連口腔疾患の科学的かつ根拠に基づいた解決策を知ることができる。

学校の臨床実習や座学の講義だけでは教わることのない、予防歯科医院が勧めるTBI。「クラプロックス製品を導入しているが、使い方を習ったことがない」「予防に力を入れたいけれど、何から始めたら良いかわからない」方は必見のセミナーではないだろうか。

1人で参加する受講者も多数!すぐに満席になってしまう本セミナーは、年間を通して開催されているので、ご興味のある方はお早めにお申し込みいただきたい。

 

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